桐山(司会)
本日は開業の先生方に臨床の現場で実際に役に立つように、症例検討のかたちで座談会を進めていきたいと思います。
では前田先生、症例をご紹介いただけますか?
「 脊髄圧迫骨折への対応 」
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症例1
63歳、女性。
転倒後、腰痛出現。
L4/L5、L5/S1の変形があったためか、
骨折の診断はされず。
胸痛、背部痛が強く大動脈癌、
心疾患を疑われCTなどの精査後、紹介される。
L2の圧迫あり。
ビスフォスフォネート、エルカトニン投与、運動療法を併用。 |
前田先生
われわれ開業医で症例が最も多く診療に苦慮するのが、脊髄の圧迫骨折です。そこで、本日は「胸・腰椎の圧迫骨折」に絞って症例を提示いたします。
症例1は転倒して腰痛が出現した63歳の女性です。レントゲンでは、L4/L5の椎間板、L5/S1の椎間板が潰れており、そのための腰痛であろうと診断されています。その後、腰背部痛が出現して、内科で大動脈瘤を疑われてCTを撮られるなど、かなりひどい痛みがあったと思われます。その後当院に紹介され、L2の圧迫骨折が判明しました。現在はベスフォスフォネートとエルカトニンとの組み合わせで治療を行い、一方で背部の筋力強化などの運動療法を併用しています。最初の主訴が下部の腰痛で、骨折を見逃しやすい要注意の症例です。骨量は超音波で計測しましたが、SOSが1,475m/sで骨量減少ということにもなります。
桐山
骨粗鬆症に近い骨量減少ですね。この症例は変形性脊髄症と骨粗鬆症の併発が考えられる症例ですね。
婦人科の先生方はどうお考えになりますか?
村上先生
私たちはこのレントゲンを見て、圧迫骨折と椎間板が狭いことについてはわかりますが、どこから痛みが来ているかまではわからないですね。
前田先生
ここで注意すべき点は、圧迫骨折は胸腰椎移行部に多いのに、本人の訴えはほとんど下部腰椎部の痛みで、それは神経の走行と関係しているといわれています。ですから、診察の際にはそういうことに注意すべきだと思います。
村上先生
当院でも、70歳の女性でどうしても腰痛が取れないという患者さんがいました。調べてみると、やはり骨量の低下がありました。治療はHRTが中心ですが、この症例ではエチドロネートとエルカトニンを投与して様子を見たところ、その後腰痛が取れて、患者さんもずいぶん楽になったようでした。DXAで調べてみると、治療開始後2年くらいまでは骨量が8%ほど増加していました。
エチドロネートは2週間投薬した後に3ヶ月の休薬期間がありますので、その間にほとんどの患者さんがドロップアウトしがちですから、休薬期間にHRTを継続して、そしてエチドロネートを使っていくか、または活性型ビタミンD3とエチドロネートを併用するという工夫をしました。
アレンドロネート(フォサマック)の成績を見ると、かなり骨量が上がりますので、これからはアレンドロネートも使っていきたいと思っています。
藤山先生
変形性関節症の診断基準、特に腰痛の原因として、どのあたりまでをとるべきかご意見をお聞かせ願えますか?
前田先生
私は変形性脊髄症はほとんどの高齢者にあると思うのです。ただ、大部分はそれが痛みの原因ではないと思います。変形性脊髄症という病名は一応つけますが、それが本当に痛みの原因、日常生活に支障をきたす原因ではないのではないかと思います。
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