「 脊髄圧迫骨折の治療 」
桐山 脊髄圧迫骨折に関してはいかがでしょうか。
鶴上先生
当院の患者さんはほとんど入院の要望があるので入院してもらっている方が多いですが、MRIを撮って、潰れやすいパターンの人とそうでない人というのはある程度自分たちの判断でその後の療法を変えています。比較的安定型というか、あまり潰れないと思う方は、コルセットを装着したらすぐに起こしています。痛みとの兼ね合いもありますが、1〜2週ぐらいで皆さん歩行できるようにしているので、その方たちはビスフォスフォネートによる治療でよいと思います。 問題は、潰れて後で偽関節を起こしたり、骨癒合しない患者や、神経の圧迫症状が出てきそうな方なのですが、3〜4週ベッド上ということも結構あります。そのような患者さんに対してはビスフォスフォネートは使えないので、ある程度期間を置いたうえで、時期を見て治療を開始しているというのが通常ですが、ベースとしては活性型ビタミンD3と除痛の目的でエルカトニン、そしてCa製剤なども使っています。
桐山 偽関節をつくったり、癒合しなかったり、神経を圧迫したり、という方の割合はどのくらいなのでしょうか。
鶴上先生 当院のデータでは、そのような可能性があるという方が10%くらいです。起こした人が10%というわけではないのですが、要するにレントゲンではなかなか判断できないのでMRIが必要だと思います。レントゲンで見て大丈夫と思っても、進行するに従って骨折が変形して圧迫が出てくる可能性があります。そのような方たちに同じように治療していてもだめではないかと考え、そういう方だけは臥床を長くしてコルセットも硬性コルセットをつけてやっているのが現状です。
桐山 一般に、脊髄圧迫骨折を起こしたら一律に構成コルセットをつけて固めているという印象を受けるのですが、どうなのでしょうか。
鶴上先生 昔は脊髄の骨折は全例にギブスを巻いていたと思います。しかし最近では、あまり潰れない方も結構いることがわかってきて、当院では症例によってはもう軟性コルセットでよいというように、だんだん適応を緩めていっています。
桐山 内科の患者さんは、既に潰れている方が多いようですが。
鶴上先生 それはたぶん治療の開始時期の違いだと思います。当院でも潰れて来られる方はたくさんいるのですが、それは最初の骨折があった時点で治療をされていない場合が多いようです。例えば痛みが出てきたのでレントゲン写真を撮ってみたがあまり潰れていないという時期に、MRIでは骨折が確認できることがあります。その時治療を開始すれば潰れずにすんだのでしょうが、レントゲンだけではなかなか判断ができないところが問題ですね。
桐山 そうすると、内科としては尻餅をついたとか、ちょっと重いものを持ったといってぎっくり腰様の痛みが出た時にはMRIまで撮った方がよいのでしょうか。
鶴上先生 MRIを撮らないとわからないのでは話にならないので、私たちのスタディも最終的な目的は、単純レントゲンで見きわめるためにはどうしたらよいかということでMRIと比較検討しています。
坂元先生 叩打痛がその時点では出ないですか。
鶴上先生 叩打痛が出る方は6〜7割ですね。出ない方もいますので、叩打痛がないから骨折がないというのは間違いだと思います。
桐山 逆に、叩打痛があっても骨折のない方もいますね。
鶴上先生 それが難しいところですね。例えば腰痛を訴えて来院された患者さんのレントゲン写真にはっきりとした骨折が確認されなくても、1週間後にもう1回撮ると骨折が確認できることがあります。そのようにして早期に骨折を発見してコルセットを装着しておけば潰れずに済むと思います。
桐山 それを見分けなければいけないということですね。
帖佐先生 私は、新鮮骨折で本当に折れていれば何らかの刺激が伝わるわけですので、叩打痛を認めると考えています。
坂元先生 ちょっとでも潰れれば炎症が起こりますから、叩き方の問題もあるのかと感じています。
帖佐先生 ただ、筋肉を痛がっている場合や過敏症の方もおられますので、叩打痛があったからすべてが骨折ということはないと思います。したがって、臨床所見と画像所見を総合して診断し治療を進めていく必要があります。 新鮮椎体骨折の症例に対し、α-TCP(α-リン酸三カルシウム)や骨セメントを圧潰した椎体に注入する方法が行われていますが、費用の問題や長期成績が不明のため普及するのには時間がかかりそうです。
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